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大阪高等裁判所 昭和53年(ネ)45号 判決 1980年2月27日

控訴人(原告)

八十三男

ほか一名

被控訴人(被告)

大正海上火災保険株式会社

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

一  控訴人ら代理人は「原判決を取消す。被控訴人は控訴人らに対し金五、〇四七、一三〇円とこれに対する昭和五〇年八月二三日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。

二  当事者双方の事実上の主張および証拠の関係は、次に付加訂正するほか、原判決摘示事実のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決二枚目表九、一〇行目にわたつた「自動車損害賠償法」を「自動車損害賠償保障法(以下自賠法と略称する。)」と訂正し、同一一行目「原告らの蒙り又は亡正光」の次から同一二行目までを『が蒙つた損害は原判決添付別紙「八十正光損害計算書」のとおりであり、そのうち亡正光の蒙つた損害は控訴人らが相続により取得した。』と訂正し、同一三行目「右法律」を「自賠法」と訂正し、同一四行目「保険金」の次に「として前項の損害のうち金五、〇四七、一三〇円(控訴人ら各自に対しては平分して金二、五二三、五六五円)」を挿入し、同裏一一、一二行目にわたつた「であつた。」を「であり、亡正光は運転免許を有したが同藤岡竜彦はこれを有しなかつた。」と訂正し、同一四行目「亡正光同藤岡竜彦が」の次に「共同して」を挿入し、原判決三枚目表七行目「に定められた第三者」を『に定められた「他人」』と訂正する。

2  控訴人ら代理人は、甲第六号証の一ないし四七を提出し、被控訴代理人は、甲第二ないし第四号証、第六号証の一ないし一九、四四ないし四七の成立を認め、同号証の二〇ないし四三の成立は不知と述べた。

理由

一  控訴人主張の日時、場所において佐藤敏之所有の軽二輪車(姫路ま八五八)を加害車として発生した交通事故により八十正光が受傷し、そのため同人がその翌日死亡したことは、当事者間に争いがない。

二  控訴人らは、右加害車は藤岡竜彦が運転していたものであり、正光はこれに同乗していたものであるから、正光は自賠法三条にいう「他人」に当ると主張し、被控訴人は、正光は藤岡とともに加害車の共同運行供用者であつたものであるから、右にいう「他人」に当らないと主張するので案ずるに、前記争いのない事実に、いずれも成立に争いのない甲第六号証の七、一〇ないし一二、四六、乙第一号証(甲第六号証の一〇ないし一二、乙第一号証中後記認定にそわない記載部分を除く。)、原審における控訴人三男本人尋問の結果(後記認定にそわない部分を除く。)を総合すると、正光と藤岡は事故当時いずれも一六歳であつて、友人であり、正光は軽二輪車を運転する免許をもつていたが、藤岡はこれを有していなかつたこと、事故当日正光および藤岡が両名の友人である佐藤から本件軽二輪車を借受けて、正光および藤岡のいずれかが右軽二輪車を運転し、他方がその後部座席に同乗して高速度で疾走中運転を誤つて道路側溝に落ちて進行し、運転者および同乗者とも車輛から投げ出されて、藤岡は即死し、正光は翌日死亡したこと、事故の目撃者はなく、正光および藤岡とも投げ出されているうえ、軽二輪車も大破しているため、事故時の運転者が右両名のうちのいずれであるかを確定する直接的証拠はないことが認められ、甲第六号証の一、九ないし一二には運転者が藤岡で正光が被害者である旨の記載があるが、右のうち甲第六号証の一、九ないし一一は控訴人らが正光を被害者として自賠責保険金を請求した際の関係書類であるからそれぞれの記載をそのまま採用することはできず、同号証の一二は新聞記事であつて前認定の事実に照らすとその記載の根拠に多少の疑義を免れず、控訴人三男の供述中右認定にそわない部分もひつきよう伝聞によるか、推測の域を出るものではないから、直ちには採用できない。

右認定の事実によると、正光は藤岡とともに佐藤から軽二輪車を借受けてこれに同乗していたものである。本件証拠上そのいずれが運転していたかを認める直接的証拠はなく、正光が運転免許を有し、藤岡がこれを有しないこと、事故時の走行速度に徴しある程度運転に慣れた者が運転していたと思われることからすると、正光が運転していたのではないかとも推測されないではないが、右の事実だけからそのように断定することはできない。しかし、正光が運転していた場合に同人が運行供用者になることはもとよりとして、藤岡が運転していた場合であつても、正光は右軽二輪車の借受人の一人であり、運転免許を有しない藤岡の背後にこれを有する正光が前方を向いて同乗していたのであるから、正光は藤岡の運転に関し指示を与える関係にあつたものと認められ、このようなところからすると、正光にも右軽二輪車の運行を支配する関係があつたものであり、右の関係において正光に運行利益が帰属していたものと観察することを妨げないから、ひつきよう、正光は本件の運行についての運行供用者であつたものというべく、いずれにしても、正光は自賠法三条にいう「他人」に該当しないものというべきである。

三  控訴人らの本訴請求は、正光が右にいう「他人」に当ることを前提とするものであるから、正光が「他人」といえない以上控訴人らのその余の主張について判断を示すまでもなく、本訴請求は失当で、これを棄却した原判決は相当で本件控訴は理由がなく、棄却を免れない。よつて、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 朝田孝 富田善哉 川口冨男)

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